こうのとりのゆりかご利用状況(熊本市発表)

 「こうのとりのゆりかご」の利用状況について熊本市が短期的検証を発表しました。
 昨日ニュースで一報を聞いた時にはまだ熊本市のサイトにはあげられていませんでしたが、今はいくつかのpdfファイルで見ることができます(→サイト)。
 発表を行なった熊本市要保護児童対策地域協議会「こうのとりのゆりかご」専門部会でこの検証を行なったのは、法医学の教授(座長)と精神科医、心理学の教授、弁護士、小児科医によって構成されるグループでした。


 ■「こうのとりのゆりかご」の運用状況に関する短期的検証(1年間) (pdf)


 ■「こうのとりのゆりかご」の運用状況の検証に関する報告書 (pdf)
 これは平成19年8月末日までの「ゆりかご」の運用状況の報告です。ここではその運用に刑法上の「明らかな違法性」が認められなかったこと、システムのトラブルもあったが改善されたこと、そしてその運用を契機として妊娠・出産に関する相談業務の充実が図られ、その社会的効果は大いに評価できるものだということなどが書かれています。
 以下12月末までの4ヶ月間の報告、平成20年3月末までの報告と続きますが、最初の報告に特記して新たに付け加えられるべき情報はほとんどないようにも見えました。
 ■「こうのとりのゆりかご」の運用状況の検証に関する報告書 (pdf)
 ■「こうのとりのゆりかご」の運用状況の検証に関する報告書 (pdf)


 「こうのとりのゆりかご」の運用を契機として妊娠・出産に関する相談業務の充実が図られ、社会的効果が認められたというあたりはとても興味深い内容でした。

相談機能の強化
いくつかの課題はあるものの、できるだけ「ゆりかご」が利用されないように、「まずは相談」という基本認識に立った上で病院としての相談機能の強化に努められている。また、公的相談機関等との連携の下、数多くの相談を受ける中で具体的な救済に結び付いた事例が認められた。

慈恵病院が実施するテレホンサービス「SOS赤ちゃんとお母さんの相談窓口」に、平成18年11月の受付開始から本年8月末日までに255件の相談が寄せられている。また、養子縁組に関する相談が133件及びメールによる悩み相談が19件寄せられていた。

 地域別には、県内の62件(31.0%)が最も多いが、県外からも関東の45件(22.5%)、県外の九州・沖縄の39件(19.5%)、関西の26件(13.0%)の順で、遠くは北海道からも相談が寄せられており、全国からの相談に対応している状況が伺える。

 相談者としては女性192件(83.5%)、男性38件(16.5%)となっており、その内訳は本人が160件(75.8%)と多くを占めるが、夫や恋人など男性パートナーからの相談も21件(10.0%)ある他に家族からの相談も14件(6.6%)寄せられている。


 相談者の婚姻関係は、80件(49.4%)が未婚、61件が既婚(37.7%)、
19件が離婚(11.7%)となっており、妊娠の事実をパートナーに伝えていない割合は32.5%となっている。


 相談者の年齢区分は大半が不明であるが、15歳未満の者からの相談も3件(4.0%)寄せられている。また、相談者の職業は不明である者が匿名相談であるので少なくなかったが、専業主婦からの相談が37件(30.3%)と多く、無職33件(27.0%)、学生18件(14.8%)、パート・アルバイト10件(8.2%)と合わせると80.3%が経済的基盤の弱い者からの相談となっている。


 妊娠葛藤に関する相談内容は、主に、出産するかどうかの悩みが37件(16.4%)、「育てられない」が37件(16.4%)、経済的問題が35件(15.6%)、「結婚できない」が32件(14.2%)となっているほか、既に出産した者からの育児に関する悩みや産婦人科に関する健康問題、産後うつ等の相談も寄せられている。


 これらの相談に対する対応の状況は、カウンセリング対応が118件(39.3%)、公的窓口を紹介したケースが62件(20.7%)、慈恵病院での対応が39件(13.0%)、他の民間相談員を紹介したケースが25件(8.3%)の順となっている。また、匿名相談の内、来所相談に繋がるなど70件(27.5%)が実名化され、その内、平成19年8月末現在で8件が特別養子縁組に結び付いている。

 「ゆりかご」を利用しようと思い来院したが、「ゆりかご」の扉前に設置されたインターホンを通じた相談を端緒として、実名の継続相談に結び付き、解決に向かった事例があった他に、相談後に慈恵病院へ緊急入院して無事に出産した事例もあった。