降る降る詐欺

 俯瞰してみればところどころ不安定な天気なのでしょうが、昨日から東関東のうちのあたりは一滴の雨も降らず、ほとんど降る降る詐欺と呼びたいぐらいの天気で暑いです。昨日はそれでも不穏な風がやや強かったのですが今日はほとんど風も無く、家の温度計は30度を超えていますね。


 こういう時は何もできないのでお酒でも飲んで本でも読むというのが常道。
 いろいろ買い出してきました。
 いただきものの黒糖焼酎でも、と思ったのですがまだまだもったいなし。少し冷やしたワインと、あときりっと冷やした日本酒でいきたいところです。
 日本酒を冷やすのはそれこそ冷蔵庫ができてからだろうと言われますが、何の日本書紀にも記述ありです。仁徳天皇のところに(わりに唐突に挟まれた)闘鶏(つげ)*1の氷室の起源説話にそれがあります。

 是歳、額田大中彦皇子、闘鶏に猟したまふ。時に皇子、山の上より望りて、野の中を瞻たまふに、物有り。其の形廬の如し。乃ち使者を遣して視しむ。還り来て曰さく、「窟なり」とまうす。因りて闘鶏稲置大山主を喚して。問ひて曰はく、「其の野の中に有るは、何の窟*2ぞ」とのたまふ。啓して曰さく、「氷室なり」とまうす。皇子の曰はく、「其の蔵めたるさま如何に。亦奚にか用ふ」とのたまふ。曰さく、「土を掘ること丈余。草を以て其の上に蓋く。敦く茅荻を敷きて、氷を取りて其の上に置く。既に夏月を経るに消*3えず。其の用ふこと、即ち熱き月に当りて、水酒に漬して用ふ」とまうす。皇子、則ち其の氷を将て来りて、御所に献る。天皇、歓びたまふ。是より以後、季冬に当る毎に、必ず氷を蔵む。春分に至りて、始めて氷を散る。

 ことし、ぬかたのおほなかつひこのみこ、つけにかりしたまふ。ときにみこ、やまのうへよりおせりて、ののなかをみたまふに、ものあり。そのかたちいほのごとし。すなはちつかひをつかはしてみしむ。かへりまうきてまうさく、「むろなり」とまうす。よりてつけのいなきおほやまぬしをめして、とひてのたまはく、「かのののなかにあるは、なにのむろぞ」とのたまふ。まうしてまうさく、「ひむろなり」とまうす。みこののたまはく、「そのをさめたるさまいかに。またなににかつかふ」とのたまふ。まうさく、「つちをほることひとつゑあまり。かやをもてそのうえにふく。あつくちすすきをしきて、こほりをとりてそのうへにおく。すでになつをふるにきえず。そのつかふこと、すなはちあつきつきにあたりて、みづさけにひたしてつかふ」とまうす。みこ、すなはちそのこほりをもてきたりて、すめらみことにたてまつる。すめらみこと、よろこびたまふ。これよりのち、しはすにあたるごとに、かならずこほりををさむ。きさらぎにいたりて、はじめてこほりをくばる。

日本書紀 巻第十一 仁徳天皇六十二年(374年)  岩波文庫版『日本書紀(二)』による)

 氷室の氷は「水酒にひたして用いる」ということで、オンザロックで一杯やってみましょう。なるべく醇な(濃い口の)酒が適当と思われますので、菊水のふなぐちでも…
 (「グーグー」の四巻も買ってきましたので、これでも読みながら)

*1:大和国山辺郡都介郷。元の奈良県山辺都祁村(現在は奈良市と合併)。大和の東縁、伊賀に出る要地。

*2:ムロ。元字は穴かんむりに音

*3:元字はさんずいに半