福島の自立更正施設

 法務省保護局が打ち出した自立更正促進センターの開所が、福島県内で地域住民の反対によって中断されているとのこと。

 自立更生促進センター構想とは,保護観察所に宿泊施設を整備して,主に刑務所を仮釈放になった人を一定期間受け入れ,そこに宿泊させながら,専門家である保護観察官が直接,犯罪を繰り返さないようにしっかりと指導,監督することにより,確実な更生と円滑な社会復帰につなげていこうというものです。

 福島の施設は、福島保護観察所の敷地内(定員20名)に今年度整備されることになっていた宿泊施設で、福島パイロット的施設と呼ばれています。こちらで良好な結果が得られれば、順次同様の施設を国内に広げていくという趣旨だと判断されます。
 地域の反対については、以下の記事などに。
 →福島の自立更生施設、開所を当面延期/法相福島県内ニュース/KFB福島放送
 →自立更生施設で3万6234人の反対署名福島県内ニュース/KFB福島放送
 また検索で得られた『福島市街地周辺地域の安心を守る住民の会』の意見というもので以下のようなものもありました(さぼてんノうたさん)

○民間の更生保護法人により受け入れを拒まれた成人男子で、薬物依存や性的嗜好性、暴力的性向などの特定の問題を抱えた出所者を中心に受け入れる全国で初の公立の更生保護施設である。


○3ケ月サイクルで20人、単純計算では5年間で約400人の仮釈放者を福島市に受け入れることになる。3ヶ月をめどに仮釈放者はセンター外に住居を探し、生活の見通しが立ち次第退所する。


○2000年から5年間で、刑務所を出所した受刑者の再犯率は、満期出所者で約6割、仮釈放者で約4割となっている。


○全国で約1300人もの保護観察者(成人)が所在不明のままとなっている。また、保護観察中の者による故意の犯罪行為によって、毎年おおむね20名弱の国民の生命が失われている。


○この施設に生活する仮釈放者は許可を得て外出することができる。門限は午後10時である。


○この施設が建設されている信夫山付近は福島市のシンボルであり、市民の憩いの場所である。また福島第四小学校、福島高校、橘高校、附属小学校、福島第四中学校、学法福島高校、桜の聖母、盲学校など学校の密集地帯であるため、登校時、下校時の学生に大きな不安をあたえる可能性がある。さらに、保護者がこの学区の学校に生徒を通わせることへの大きな不安につながる可能性がある。またこの地区には街灯のない路地や空家、森林が多く隠れる場所も多い。


○当初、京都、福岡、福島の三県で建設、運営が予定されていたが、危険性を懸念した住民たちにより拒否され、京都、福岡はすでに停止されている。福島は全国に残されたたったひとつの施設である。


○民間の更生保護法人が受け入れを拒んだ者を全国から集めるため出所後は福島市に定住する可能性が高く、治安が悪化する可能性がある。福島市全体のイメージの荒廃につながりかねない。

 懐疑派、反対派の住民の方の意見は概ね「不安である」ということと「なぜ自分たちのところが引き受けなければならないのか」というあたりに集約されるでしょう。そして直接の差し止め要求については「住民への説明不足」というところを前面に出している様子です。


 まさに渦中の地域住民でない立場で「地域エゴ」と言ったり「どこかで引き受けなければいけないんだから」と言ったりするのは簡単でしょう。しかしそれを全くの第三者が離れたところから言い募ることにも忸怩たる感情をおぼえないわけには参りません。
 ただ一つ、私は犯罪者をそれとして隔離・矯正することについてまで反対はしませんが、出所した元受刑者まで隔離することはやはりできないとも考えます。形の上でも罪を贖い、人権は回復したはずなのですから。
 このケースでは、仮釈放の保護観察者であるという部分がすっきりしきれないところではありますが、もし自分のところの近所に…ということがありましたら、正面切って反対する側には参加できないと思う立場です。


 とりあえず
「民間の更生保護法人により受け入れを拒まれた成人男子で、薬物依存や性的嗜好性、暴力的性向などの特定の問題を抱えた出所者を中心に受け入れる全国で初の公立の更生保護施設である。」
 という部分が本当にそうであるのかの確認が必要であろうと思います。法務省のサイトでは
「刑務所内での成績が良好であるのに,現状では適切な受け入れ先を確保できない者」
 とだけあって、家庭環境等で受け入れ先がない人という感じの記述しかありませんし、直接の話し合いで本当にそういう裏があるのか、デマではないかということを確認すべきかと思います。
 「排除と隔離」に関して、難しい類の実際の問題です。