岩佐又兵衛

 昨日、BShiで「夢の美術館 江戸の名画100選」の第一回を見たのですが結構面白かったです。(正月の番組の再構成だそうですがそちらは未見)
 で、その中で大和絵岩佐又兵衛が描いた「山中常盤物語絵巻」(重文 MOA美術館蔵)が紹介されていて、まあ何と言いますか奇妙に写実的な殺害描写がある絵巻物でした。この絵巻物は全12巻、すべてつなげれば150mを越える超大作だそうで、牛若丸伝説を主題にしたもの。
 こちらに「美の巨人たち」で採り上げられた時の紹介文や画像がありますが、お話の筋立ては「若き牛若丸が奥州に行き、その身を案じた母の常磐御前が後を追う。しかし常磐は美濃の山中で盗賊に襲われて落命。その後偶然その場に泊まることになった牛若の夢に母が出現し仇討ちを願う。牛若は盗賊たちをおびき寄せることに成功し、全員を殲滅する」といったもの。
 常磐御前が殺害されるところも、復仇のため盗賊を斬る場面も、血飛沫が飛び身体はばらばらに切断されるといったとてもリアルなグロテスクさをもっていまして、これは確かに奇作であろうと感じます。
 そして番組の中で、戦国武将の子供として生まれた岩佐は幼い頃に母を含めた一族が惨殺された経験を持っていて…ということが語られまして、思わず「デクスター」を思い出してしまいました。(←我田引水)


 さらに少し検索してみたところ、何とこの岩佐又兵衛荒木村重の息子であったという事実がわかり、かなり驚きました。信長に(不可解な)反旗を翻して、結局一族皆殺しになってしまった荒木村重の謀反については、説得に遣わされた黒田官兵衛が一年も土牢に閉じ込められていたエピソードとともにいろいろな歴史小説・文学作品で目にしていたものです。
 村重本人だけが秀吉の時代まで生き延びていたのは知っていましたが、まさか息子が高名な絵師としてその後活躍していたとは全くの初耳。
 MOA美術館には一度だけ参りましたが、この絵巻は常設されていなかったはずです。特別展でもあれば、もう一度訪れてこの絵巻を見たいものだと思いました。