万愚節
いよいよ書いたりするのがちょっとつらくなりましたけど、せっかくの新年度なので過去記事(07/04/01)の再掲です。この時はエイプリル・フールについてちょっと調べて書いていました。
四月一日に友人知人をかついだりいたずらしたりするこの「まつり」の日のことについて調べてみました。
この日の名称として英語ではApril Fools' DayまたはAll Fools Day、これを日本語にうつして「四月馬鹿」または「万愚節」*1ですが、この頃はそのままエイプリルフールと言った方が通りがよいでしょう(メディアで「馬鹿」という言葉が避けられた所為もありそうです)。
フランスではPoisson d'avril「四月の魚」となっていて、これはPesce d'aprile(伊)Pez de abril(西)というようにラテン系諸国に共通のようです。
Aprilscherz(独)、Aprilscherz(蘭)、Aprilsnar(丁抹)などは「四月+冗談」、Dia da mentira(葡)は「嘘の日」。こちらのほうの国々は、日本と同じように「かつぐ日」として結構後からこの「まつり」の風習が入ったようにも思われます。
そう言えばと今さらながら気付いたのは、April Foolと言うのが「騙された愚者」を指しているということですね。「四月馬鹿」の訳語が付けられた頃はこのニュアンスもあったのでしょうが、今の日本ではエイプリルフールという言葉が「エイプリルフールの日」自体を指していると思いますので微妙に違います。
フランスのPoisson d'avrilもそういうカモになった人のことも指し、古典的ないたずらとして「背中に魚を括りつける」のが定番だったらしいです。またパティスリーにはこの日、魚の形をしたチョコレートが並んでいるとのこと。
国によっては(アイルランドとかキプロス)エイプリルフールの日のいたずらが「四月一日の午前中まで」とされているそうで、午後になって引っ掛けをする人が今度は
April Fool is dead and gone,
You're a fool to carry it on.
と、子供たちに囃したてられるそうです。
さてその起源ですが、詳しいことはわかっていないとされるにせよ有力なのは「16世紀フランス説」です。
それまでヨーロッパではユリウス暦が使われていたのですが、1564年にシャルル9世がフランスでグレゴリオ暦(新暦)を採用したのがきっかけになった…というのがその大筋のところですね。(教皇グレゴリウス13世が発令した暦でしたから、カトリック国に先に受け入れられたという経緯があります)
そして、これにはどうもローマ由来のHilariaという祭りが関わっているようです。それは、Cybele-Attis cult(キュベレー*2-アティス*3信仰)やIsis-Osiris cult(イシス*4-オシリス*5)信仰から続くもので、春(といいますか春分の頃。3/25からの8日間)に新たな豊穣を願って祝祭を行なうものでした。これがグレゴリオ暦の導入をきっかけにしてつぶされる(もしくはつぶされると人々が思った)ということがあり、それに対する抗議の意味で始まった「まつり」がPoisson d'avrilだということがよく言われているようです。なにせ自然発生的な風習ですし、いろいろな変遷を経ていますのでその起源に辿りつくのはとても難しいのでしょう。
私は単純にかつての春分の祭、収穫祈念祭が「乱痴気騒ぎ」的意味(一度秩序を崩して、その再生を図る)で今のように形を変えて残存しているんじゃないかと考えますが…
日本語版Wikipediaの次のような起源説明については元となる記述が見つけられませんでした。ここまで詳細なエピソードはどこから来たのでしょう。
その昔、ヨーロッパでは3月25日を新年とし、4月1日まで春の祭りを開催していたが1564年にフランスのシャルル9世が1月1日を新年とする暦を採用した。これに反発した人々が、4月1日を「嘘の新年」とし、馬鹿騒ぎをはじめた。
しかし、シャルル9世はこの事態に対して非常に憤慨し、町で「嘘の新年」を祝っていた人々を逮捕し、片っ端から処刑してしまう。処刑された人々の中には、まだ13歳だった少女までもが含まれていた。
フランスの人々は、この事件に非常にショックを受け、フランス王への抗議と、この事件を忘れない為に、その後も毎年4月1日になると盛大に「嘘の新年」を祝うようになっていった。これがエイプリルフールの始まりである。
そして13歳という若さで処刑された少女への哀悼の意を表して、1564年から13年ごとに「嘘の嘘の新年」を祝い、その日を一日中全く嘘をついてはいけない日とするという風習も生まれた。その後、エイプリルフールは世界中に広まり、ポピュラーとなったが、「嘘の嘘の新年」は次第に人々の記憶から消えていった。
(日本語版Wikipedia)
なぜ「魚(Poisson)」か、ということにつきましても諸説あります。春分の直前にかけて十二宮の魚座(2月19日〜3月20日)だからとか、魚しか食べれないレントの期間の延長だからとか、春の魚は幼魚で捕まえ(だまし)易いからとか。でもやはりこれはキリストやキリスト教の信仰の象徴として「魚」(ICHTHUS)があるからということではないでしょうか。(俗説ですが、ギリシャ語の「魚」イクトゥス(IXOYC)は、イエス・キリスト・神の子・救い主という言葉を並べた「縦読み」(アクロスティコ/各行、各段落にある最初の文字を読む)で読めるから…というものもあります)
こういうふうに、エイプリルフールももとを辿れば結構普遍的な「春分の日のお祭り」につながっているというのは面白い発見でした。