中島梓さんが亡くなった

 彼女の本で一番最初に読んだのは中島梓名義の評論で、結局購入した本も栗本薫名義の小説より中島梓の評論本が(実は)多い私にとっては、やはり中島梓さんが亡くなったという感が強い。
 世界最長編小説…みたいな凄い看板は無かったしそれほどきらびやかさもないのだが、私には彼女の才気が感じられる評論本が肌にあうものだった。
 ヒントでピントの時は中島で出ていたのだったか、栗本で出ていたのだったかもはや記憶は定かではないが、あのクイズ番組も折に触れて結構見ていた。あれがなければ彼女の容姿や喋り方などは知ることもなかったかもしれない。


 ネットの時代になり、彼女のサイトが拉致被害者問題で「炎上」というように聞いて一度か二度覗いてみたことがあった。拉致された被害者の人生は「劇的」なものだから不幸じゃない…というようなことを書いて、あちこちから批判を受けていたようだった。
 飲み屋で内輪で言えばありそうな暴論を無神経に公開してしまったというミスなのか、それとも違った真意があったのか、もしくは確信犯的な何かイイタイコトがあったのか、そこらへんはよくわからなかった。彼女はまもなく謝罪か何かをしていたと思う。それきりそのサイトも覗くことは結局なかった。


 御病気も聞き、そこから復帰した話も耳に挟んでいた。グイン・サーガのアニメの番宣で、NHKにちょっと出たのも目にしていた。元気になっているように見え、よかった…と思った。「映像化されることで、自分でも想像でしかなかった大群衆や軍隊の突撃シーンなどが目のあたりに見られるのは嬉しい」というようなことを、和装で語っていた。少し太られたぐらいにも見えていた。
 あれからまだ一月かそこらしか経っていないのに。はかないものだ。
 

 思い残すことができるだけないように、最後はやりたいこと、やらなければいけないことをどんどんやられていたと聞く。何故か、彼女にはあまり心残りが無かったのではないかという感じがしてならない。できれば本当にそうであって欲しいと、それだけを願う。