野菜は高いまま買う

 天候不順で野菜の収穫に問題が出てきて、値上がりする野菜が出てきているというお話。
 高くなったら高くなった野菜を買うべきなんだと思います。
 ⇒長雨と低温で野菜値上がりNHKニュース)

7月29日 19時14分
 長雨や気温の低い日が続いている影響で、関東や東北を中心に野菜の生育が遅れたり生産量が減ったりしていて、ジャガイモの卸値が去年の2倍になるなど、野菜が値上がりしています。(後略)

 もちろんエンゲル係数が高めのお宅には厳しいでしょうが、ちょっと高くなったからと忌避するばかりでは農家はやっていけないということに。野菜が10%や20%高くなったといっても100円もあがるわけじゃないでしょう。大げさに反応して買い控えでも起こった日には農家が苦しくなるだけで、それで生産を止める人がでてくるようになったとしたら自分の首をゆっくり絞めるようなことにつながらないかと。


 一昨年あたりから去年にかけて、穀物価格が異様に高騰した時期がありました。そのころのニュースで酪農生産者たちが悲鳴を上げるといったものが多かった記憶があります。
 ⇒牛乳が30年ぶり値上げへ 穀類価格高騰に生産者悲鳴(アメーバニュース 2007/12)

 乳業最大手の明治乳業と、2位の森永乳業は10日、来年春にも牛乳を値上げすると発表した。バイオエタノール製造のあおりで乳牛の餌になるトウモロコシや穀物価格が今年に入って急騰し、牛乳の生産コストが高くなったため。牛乳の値上げは30年ぶりで、上げ幅は約3%前後となる。


 牛乳は卵と並び、安定した供給を保つ「物価の優等生」と言われている。牛乳の原料となる国産生乳の価格(乳価)は、生産者指定団体とメーカーが、毎年交渉により決める。メーカーや小売店は、「牛乳離れに拍車がかかる」などとして牛乳の価格の引き上げを拒否し続けてきたが、生産者側ではトウモロコシの価格が1年前と比較し1.5倍程度になっていることから値上げへの理解を求める声があがっていた。(後略)

 この記事は当時ブックマークしていたものですが、たとえば牛乳が30年間も値上げできなかったとかいうのには驚いた憶えがあります。そういうことを意識していなかっただけに。
 30年前、1970年代の末あたりのものの値段で据え置かれているものがどれだけあるでしょう?
 たとえば郵便料金(封書)は当時15円。新聞購読は一月568円、ビール大瓶132円、理髪料金(大人)555円。国鉄の最低運賃が80円から100円、タクシーの初乗り280円から330円(79年に380円)。コーヒー一杯240円ぐらいでハイライトは120円。ちょっと検索しただけでこんなものです。
 大体のものは大きく値を上げてきたじゃないですか。どうして牛乳とか卵は値段があがってもらっては困るとか言えるでしょう。諸経費を転嫁できない弱い立場だったから、その他のところで非常に苦労されたと思います。


 食料品なんかの値段が安ければそれは助かります。でもこれは消費者としての立場論です。それは意識しておかなければいけないところ。自給率だ戦略的思考だとか言う前に、生産者に無理を押しつけすぎるのはいけないんじゃないかと普通に思うべきなんじゃないかと考えるのです。
 50円、100円高くなったとしても、嗜好品をその分少し減らせば吸収できる人が多数なんじゃないですか?高くなった野菜は高く買うべきなんです。農産物は天候に左右されるもの。安くなるときはどんどん安くなりますから。*1


 しかも輸入食品の影響とやらで、生産者には踏んだり蹴ったりの状況も。
 ⇒「農業ビジネス」はくそくらえだ。 その3(やまけんの出張食い倒れ日記)


 農業は、いろんなところで期待されているようなビジネスには成り得ないものだ。その理由は下記に示すとおり。


1. 農産物価格が安すぎて収支が合わない
そもそも90年代後半から、農産物の価格が安くなりすぎてしまった。中国などからの輸入食品をベースに食品価格が設定されるようになったからだ。今、輸入食品の安全性が云々されているにも関わらず、国産品をベースにした食品価格に戻すという動きはない。「安全じゃないとイヤだけど、値段は安くなきゃ買わない」というわがままな消費者ばかり居て、その消費者に対して安値を武器に販売している小売・外食事業者しかいないのに、農業が儲かるはずがないのである。

 スーパーマーケットのみならず、八百屋さんみたいなところでもばら売りをしなくなってきたのも「価格上昇」を殊更大きく見せている原因でしょうね。バラなら本当に値上がりといっても数円単位でしかありません。
 値段の上昇を騒ぎ立てるより、黙って天候不順の負担をシェアすることが、回り回って自分たちの益にもなると考えたいものです。

*1:まあこれを言うなら、あまり生産調整はして欲しくないのですが。ニワトリと卵で、まずこちらがどんどん高くても買うようになればいいのかもしれません。