ご近所

玄関わきの亀裂

 引っ越して二年ちょっとで最もご近所と話し、いろいろ存在を意識した一週間でした。ただちょっと被害状況はうちが突出しているみたいです。筋向かいの、震災直後にストーブをお貸ししたお宅の奥さんが来てくださって話してくださったことには、そちらのお宅も微妙に傾いたようで担当のお役人に来てもらって簡単に調べてもらったそうですが、一応無事であるという診断。で、我が家も気にかけてくださって、外側からでもあちらの家を見て欲しいとお願いしてくださったそうなのですが、担当の人の言うには「これは次に大きい地震が来たら危ない」ということだったそうです。
 もし手を打っていないなら早急に何とかしてみたら、と言ってくださるために訪れてきてくださったとのこと。ありがたいお話です。丁寧に謝意を述べ、実は当日から手は打ち始めているんだけれども、どうにも業者さんから連絡がなくて…ということを話しました。
 余計なお世話かもと躊躇したんだけれども、と語ってくださった奥さんの態度は、確かにこの震災を経て「ご近所」になったんだなあと思わせてくれるものでした。実はうちだけ上下水道が止まっていて…と話すと、知らなかったわと、知っていたらうちのお風呂を使ってもらったのにと言ってくださって、さすがに「ありがとうございます、でもとりあえず当て(ホテル)がありますので」と申したのですが、こういうお互いのやりとりは一週間前までは無かっただろうなと感じるものでした。


 とは言え、さすがに普段から長くおつきあいしていないと、こういう時にお風呂をお貸しいただきたいとこちらから申し出るのには抵抗があります。新興住宅地のおつきあい、しかも引っ越してから二年半ほどのものだとこういう感じではないかなと思います。それは私の(よく言えば)慎重さ、(悪く言えば)甘え下手というか臆病なところも影響しているのでしょうが。


 以前のところは、ここよりも昔から住まれていた方が多い田舎で、特に自分が犬を飼っていたのをきっかけに「ブッタちゃんの親」として周囲にも認識され、お付き合いも早い段階から今より馴染めていたのでしたが、残念ではあるけれどもこういうきっかけでやっと肩を並べてきたのかなと少し実感。


 情けは人のためならずとは言ったもので、ためらう奥さんに半ば押しつけるようにストーブをお貸ししたあの時が一つの転機だったんだなと本当に思います。
 でも、それこそこうして馴染んで来たのにまた転居が近づいている気がします。本当に引っ越したら、今度はもっと積極的にこちらからいろいろアプローチしていきたいなと、ちょっと思えたのでした。