靖国問題の基礎知識1

Q 靖国神社とは何ですか?


A 現在は単立の宗教法人です。国家神道があった頃は特別な意味を持った官社でした。明治2年(1869)東京招魂社として創建。当初は戊辰戦争の戦死者を祀るものでしたが、西南戦争以降、国難に殉じた人を祀る神社として位置付けられ、明治12年靖国神社と改称されました。昔の特別な意味とは、従軍して戦死した人が祭神となってここに祀られるため、軍人やその家族にとって重要でしたし、国のために死ぬという自己犠牲の精神を称揚するためのものとして機能していたということです。


Q 国家神道とは何ですか?


A 明治維新期に、いきなり大量の西洋の文物が流入してきたため、国家主義の元勲たちは思想的混乱が起きるのではないかと心配しました。そこで復古神道を以って国の精神にしようとしました。態のいい国教です。しかし大日本帝国憲法でも西洋を真似て信教の自由がうたわれています。この矛盾をはらすため、「国家神道は宗教ではない」という主張がなされました。皇室崇敬と同様に日本人なら当たり前に持つ基底的なものだとしたのです。これにより「大日本帝国臣民」すべてが無制限に国家神道に包摂されることになりました。


 当時同化政策がとられていた韓国民ももちろん皇民と考えらるため、国家神道の枠内に入れられました。朝鮮半島・台湾・南洋の島々などにも国家神道の神社は創られました。中国の人に対しては「敬神の念篤い中国人も崇敬者とできる」と許可制?でした。

 国家神道の頃はほとんどの神社がその系列に入れられ、官の神社となりましたので、その場合神職は国家公務員、予算は国から支給となりました。この制度を復活したいなと考える人たちが戦後創ったのが「宗教法人 神社本庁」です。


Q 靖国は宗教ではないという主張もありますが?


A 国家神道が主張したのと同様に、お国のために亡くなった方を慰霊するのは国民として当然のことだから、靖国は宗教ではないんだと言うことを主張する人々がいたのは事実です。しかし、これに対して日本宗教学会は「靖国は宗教である」と明確に学会見解を出しております。


Q 国家神道靖国神社の関係は?


A 靖国の創建は明治天皇のお声がかりだったと言われますし、形として「朝敵」であった西郷隆盛靖国神社に祀られていないというところからも、戦前の靖国神社国家神道および天皇崇敬・愛国のために機能していた(ずぶずぶの関係であった)ことは事実です。


 しかし日本国憲法において政教分離がなされ、国家神道が歴史的存在になった現在では、ほとんど戦死者の家族にとってのみ意味のある神社として考えてよいと思います。


Q 神道とは何ですか?


A そんなのが簡単に答えられるくらいなら、私、本書いてます。