APPARITIONS in Late Medieval and Renaissance Spain

 光のマリアのJaenの事例は、上記書籍p.40以下のものをまとめました。

 出典:William A. Christian, Jr., "APPARITIONS in Late Medieval and Renaissance Spain", Princeton University Press, 1981.

Introductionより
 本書は15世紀のカスティリヤ地方とカタロニア地方の人々の心の中にあるイメージの世界を探求するものである。この目的のため、本書は一連の、普通の人々、子供、農夫、羊飼いの妻達、下僕達の天国の(神的な)ヴィジョンの逐語的な報告からなる。それらもまた、彼らが見聞きしたもので、詩人のように、言葉によって、イメージの世界を表そうとするものである。時にそれらは公の神聖劇の特徴のようであり、その記述は絵画や彫刻の基礎を形作る。そのヴィジョンから何かでっち上げるとか説明するとか言うよりも、私はそれらからいかに人々が、知っている世界と想像しなければならなかった世界の双方を経験したかを学ぼうとしたのである。これらは、その二つが交差した特異な時点であり、マリアと聖者達が彼らとともにいた時点なのである。(私訳)


 Apparitionとは(幻影、霊などの)「出現・顕現」のことを言います。この書籍では、スペインの1399年以降の(公的に証された)apparition、つまりクリスチャンと聖なる存在(神、精霊、聖母マリア等々)との出会いの記録が取り扱われています。Inquisitionや教会などに文書として記録が残されたもののみを対象とし、極私的なものは範囲外とされています。修道士や修道女の啓示は個人的価値に限定されると筆者が考えたからです。
 その地方社会的にapparitionと公的に認められた聖なるものとの出会い(一次的な直接知覚的接触を伴ったもの)の証言は、その地方の古い忘れられたような聖堂の再建・新たな聖堂の創建につながることがしばしばです。それは、神の恩寵・慰めの特別の源泉として「その場所」や「聖像」が聖化され、敬虔なカトリックの信仰復興が起きるからです。(これは不信仰状況への揺り戻しでもあります)
 またそこで、現実の差し迫った破滅に対抗するためのクリティカルな指示が与えられた場合には、政治的な運動が起きたりもしますし、その場所への巡礼が開始されたりもします。


 この書籍では、いわゆる「客観的に何が起きたのか」という探求は行いません。あくまでも当時の人にとっての意味を考えようとするものです。
 ただ最初にこれを読んだとき、特に上記引用のJaenの事例を読んだときですが、思わず「時をかける少女タイム・トラベラー」(NHK少年ドラマシリーズ)の冒頭、城達也さんのナレーションを思い浮かべてしまった私がいます…(笑。


 もう少しこれは続けたいと思います。