種主義

 一部の国で入国拒否されるほど「過激な倫理学ピーター・シンガー」なども唱えているものですが、「種主義」(Speciesism)なる言葉がここ十年ほどで結構語られるようになりました。何よりgooのオンライン英和(三省堂提供「EXCEED 英和辞典」)にもすでにこの語があったのにはちょっとびっくり。いわく「種差別 (人間を頂点として生物種には優越があるとする)」とされていました。
 ある意味「弱者」を思い遣る論理が、その弱者に「(人間以外の)動物」を比定してやや暴走しているという感も否めませんが、最近のニュースであった「フォアグラつくりのための残虐な殺し方禁止」(参照・木走日記)などにも、思想的背景としてこの「種による差別(スピーシージズム)」への反省が考慮されていたのかもしれません。


 ジャイナ教徒である以外は、ほとんど誰もこのスピーシージズムから逃れることはできないかもしれません。当たり前のように他の動物を喰らい、それを利用することで人間の生活は維持されています。弱者への気配り・気遣いも、ここまでくると共鳴者を減らすかもしれません。私は無条件にこれに賛成するものではありませんが、「弱者」に配慮しないことを悪だと思われている方々には、あるいは一種の「踏み絵」のように選択を迫るもののような気もいたします。そこまで徹底して考えることができるかどうかの選択です…


 一種お決まりのように、日本でこの種主義が語られるときには西欧文明の動物への対し方と仏教文化の動物への配慮というものが持ち出されます。槍玉に挙げられるヨーロッパの象徴は「キリスト教」です。たいていなぜか旧約の『創世記』の一節が引用されます。

 神はまた言われた、
「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、これに海の魚と、空の鳥と、家畜と、地のすベての獣と、地のすベての這うものを治めさせよう」。神は自分のかたちに人を創造された……(中略)。…神は彼らを祝福して言われた。「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ。」
 (創世記第一章二六節〜二八節 一九五五年改訳日本聖書協会)

 そして、これが「不当な動物の搾取ないし虐待を許容する思想」として扱われるという按配です。また同時にそこでは「理性」の多寡によって存在のクラス分けをしていたギリシア文明への言及も多くあります。


 ただ私が疑問に思っているのは、種主義の淵源を単純に旧約とかギリシア思想などに単純に求めるならば、それこそグリーン・ピースなどの過激な団体の存在や、ペット虐待禁止法をいち早く作りペットの権利宣言までしたイギリスなどは、キリスト教伝統やギリシア思想の影響から脱したとするのか…ということです。
 説明としてはわかり易いのですが、どうもそれだけで語られたときにうさんくささもあるような気はいたします。


 クラゲの話からこういうことを思い出しました。(あるいはもう少し続けます)

(追記)ペットの「基本的動物権」を制定へ 英国

2002.04.29 Web posted at: 17:46 JST
(CNN) 英政府では現在、ネコやイヌ、その他ペットの最低限の生活を保障する法案を計画中で、この法律が制定されれば、ペットの「基本的動物権」が確立することになる。英サンデータイムズ紙(電子版)によると、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)ではすでに動物の権利基準を独自に作り、具体的な法案制定へ向けて政府に協力しているという。


新法案では、えさや水、充分な生活空間など、ペットが必要とするものを与えなかった飼い主は起訴されることになる。1911年に制定された動物福祉法では罪に問えるのは、動物を明らかに虐待した人のみだが、新法案では、動物の基本的権利を侵害した飼い主を訴えることができるようになる。


RSPCAでは、すべてのペットとサーカスの動物に「5つの権利」を保障すべきだとして、次のようにわかりやすい文面で動物の権利をうたっている。


・健康な生活を送るために充分な食料と水を得る権利


・快適な生活場所を得る権利


・病気や痛みのない生活を送る権利―病気になった場合には、速やかに治療を受ける権利


・動物としての自由な行動ができる権利―充分な場所と仲間の確保を得る権利


・精神的苦痛を受けない権利


例えば、ネコの飼い主がネコを閉じ込めたり庭を歩き回る機会を与えなかったりした場合や、セキセイインコの飼い主が狭いかごに閉じ込めたりした場合が「権利の侵害」に当てはまるという。この法案を立案したモーリー環政務次官は「動物にとっての最低限の基準を設け、法律を現代に即したものにする必要がある。と述べている。


RSPCAのフランク・ウッドゥソン氏は「動物を飼う人にはすべて『世話をする義務』があり、法律的にも責任をおって動物を飼うべきだ」と話している。

 かつて拾っていた記事です。元のurlは不明になっていますが、上の記事を書くとき頭にあったものです。