モラル・ハザード

 モラル・ハザード(moral hazard)とは単なる倫理観の喪失や規律を欠いている状態のことではなく、もともとは保険用語で

 リスクに対して保険が準備されているために、リスク回避の意識が薄れ、リスクを促進させてしまうこと。
経営用語の基礎知識より)

 です。リスクに対してそれを補う手段を講じているとの気持ちが、そのリスクを回避しようという意識を希薄化させ、結局はリスクを昂進させてしまうという逆説的に見られる行動を言います。


 責任意識や努力する意欲は、ある部分リスクを避けようとする心から出て参りますので、そのリスクは「自分においては」問題がないという安心があれば責任感や努力が欠けるようになるのは人情かもしれません。しかしこのリスク、保険を支払う会社の方では消えるどころか増大してしまいますので、「保険という仕組み自体」を危うくするものになりかねないのです。なあに奴らは儲かっているのだからとモラル・ハザードが進展してしまいますと、保険会社の経営が成り立たなくなって結局「保険をかける」という行為自体ができなくなってしまうかもしれないということです。


 性善説に立たないとして、巷間言われる「セーフティーネット」というものが完璧になればなるだけ、モラル・ハザードの危険性は募るわけですから(しかもそこで倒れるのは保険会社や保険という仕組みではなく、国やその国を構成する国民・経済です)福祉社会を望む論者には、いかにしてモラル・ハザードを避けうるかという問題に関しても何らかの解決策が望まれるのではないでしょうか?