モーツァルト効果

 夕べの「クローズアップ現代」では妙にモーツァルトを持ち上げていましたが、ブームだそうで…
 いわゆる「モーツァルト効果」に言及してしまうんじゃないかとはらはらして見ていましたが、ぎりぎりそこまではいかなかったですね。ずっと以前にこれについて「はてな」で回答したことがありました。


【モーツァルト効果】通称“モーツァルト効果”と呼ばれる、『2台のピアノのためのソナタニ長調, K.448(Sonata for 2 Pianos in D major, K.448)』を聴いた直後にIQが向上することを初めて発見した以下の論文を、補強または反証した文献を、要旨を添えて教えてください。Rauscher FH, Shaw GL, Ky KN.『Music and spatial task performance』(Nature. 1993 Oct 14;365(6447):611)※参考資料:・Mozart Effect Japan →http://www.mozarteffect.jp/・音楽と空間認知の発達的関係 →http://www.coder.or.jp/hdr/15/HDR.Vol15.7.pdf・モーツァルトの音楽を聴くと、身体に様々な効果があるらしいのです。 →http://www.hatena.ne.jp/1098162837

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 ちょうどこの実験に触れて、ネガティブに記述してある本があります。アカデミックなものとは言えませんが(出典などが明記していない一般向けの本)登場する人名からPubMedなどで検索する手がかりになるでしょう。


上記書籍「第四章能力開発」pp.157-160

 物理学者ゴードン・ショーと知覚の発達が専門の心理学者フランシス・ラウシャーは、数十人の学生にモーツァルトの音楽を聞かせてその影響を調べた。彼らは学生たちに、モーツァルトの「二台のピアノのためのソナタニ長調(ケッヘル四四八番)の冒頭の10分間を聞かせた。すると、空間的・時間的思考に一時的に向上が見られた(測定は「スタンフォード−ビネー知能検査」によっておこなわれた)。もっともこの効果は15分間しか続かなかった。また、この結果を追試によって再現することには誰も成功していない。

…現在でも、音楽(もちろんクラシック)の教育的価値について書かれた記事などには、ほとんど必ずこの実験が引き合いに出されている。「誇張された誤った主張があまりにも横行しているので、これをいちいち訂正しようとしたら時間がいくらあっても足りないほどだ」とアメリカの哲学教授ロバート・T・キャロルは嘆いている。

 信奉者には気の毒だが、モーツァルト効果には科学的根拠がないとする研究者の報告が最近になって相次いでいる。州立アパラチア大学心理学教授ケネス・スティールとマクドネル財団総裁ジョン・ブルーアーなどが批判派として知られている。…ショーとラウシャーの実験記録に忠実に従い125人の学生で追試をおこなったが「まったく何の効果も」認められなかった、と彼らは強調している。

 ハーバード大学の心理学者クリストファー・チャブリスによれば、スティーブン・キングを読むことやポップ・ミュージック(被験者の好きな音楽であることが前提条件である)を聞くことにもモーツァルトの音楽と少なくとも同じ効果があることを示した実験例があるという。チャブリスは、「心地よい刺激」に認識能力を向上させる効果(ほんのわずかなものではあるが)があるのかもしれないと述べている。
モーツァルトの音楽に本当にそんな健康促進効果があるのなら、どうしてモーツァルトはあんなに病弱だったのだろう」とロバート・T・キャロルはシニカルに問いかけている。モーツァルトの音楽がそんなに知能を向上させるというのなら、世界で最も頭が良くて独創的な人間がモーツァルトスペシャリストでないというのはどうしたわけなのだろう。「モーツァルト効果は、科学とメディアが現在いかに混交しているかを示す一例である」

※要旨としては、追試に成功していない。何もモーツァルトの音楽だけに効果があるのではない。またあっても微弱である。といったところが否定派の論拠とされているようですね。

 イエロー教授の件といい、『ネイチャー』(なり『サイエンス』)に載ったものでも際物はあるよ、ということでしょうね。

(※回答中では参考文献がないみたいに書いてしまいましたが、当該の本の巻末に参考文献が並べられておりました)