臓器移植法案

 臓器移植法案「A案可決」賛成263票

 子供の臓器移植に道を開くかどうかが焦点となっている臓器移植法改正4案は、18日午後の衆院本会議で採決が始まった。臓器移植をめぐる法案の採決は平成9年以来12年ぶり。採決は国会提出順にA〜D案が採決され、最初に採決にかけられたA案が263票と過半数を得て可決された。反対は167票だった。今後、参院で審議されるが、A案を成立させる流れが強まった。


 投票総数は430票。過半数は216票。A案は「脳死は一般に人の死」と位置づけ、本人が生前に拒否しなければ、家族の同意で臓器提供を可能にする。また、15歳未満の臓器提供を禁じる現行法の年齢制限を撤廃し、子供の臓器移植に道を開く内容。


 共産党をのぞく各党は「死生観にかかわる」として党議拘束をかけず、議員個人の判断で投票した。共産党は「議論が尽くされておらず採決は時期尚早」として全員棄権した。与党と民主党は4案とも否決されれば全案を廃案とし、各案の獲得票数をもとに新改正案を作成して提出する方向で調整していた。(後略)
MSN産経ニュース

 まさかの可決…という印象です。
 臓器移植推進を目指していた医師、医療機関、関係者、そしてレシピエント候補の患者や家族の方々には朗報といいますか、現時点では最大の成果と言っていいでしょう。


 このいわゆるA案は(年齢を問わず)脳死を一律に人の死とするもので、書面での本人の生前の意思確認(ドナーカードなど)が不要とされるものです。
 本人の意思確認が不要ということで15歳以上にだけ認められていた意思表明の正当性・有効性云々が消え、これからは脳死者の家族の同意だけで、年齢を問わず移植手術が可能になるはずです。


 あの10年ちょっと前の「脳死を一律に人の死とすること」をめぐっての様々な論議は一体何だったのだろうと思わざるを得ません。
 今回話の中心に置かれたのは「海外での臓器移植が原則できなくなる」というそれだけのことです。それだけですべての議論がひっくり返されて(というか棚上げされて)、ほとんど話し合う間もなくこの決定…。内容に反対しなければならないと強く考える立場でもないのですが、あまりに急にことが運んでしまったことに唖然とするばかりです。


 これから、事故その他で「脳死と判断」された患者さんの家族は、臓器移植に同意なさいますか?ご協力くださいますか?どうですか?と、急逝を悼む間もなく非常に難しい問いを投げかけられる場面が圧倒的に増えるはずです。
 ドナーカードが要らなくなったとしても、まさにそれを持つ気構えで、家族の中でいざというときの対応を話し合い意志を確認する作業がさらに必要になったのだと思います。移植されたくないという意志を持つならば、家族に話すか不同意のドナーカードを用意して携帯しておくべきです。
 まさかこんな風に決まるなんて、と驚く気持ちで何か動揺してしまっています。