生活保護申請却下にあてつけ自殺?

 おととい24日のことです。秋田市役所駐車場で男性が練炭自殺をしました。生活保護を却下されたということに対する抗議ではないかとニュースになりました。(さきがけon the Web記事)。ニュースの詳細を知らぬまま、印象としてはそれこそ「現代の貧困の問題」「福祉予算の縮小に関わる問題」かとも受け取っていました。しんぶん赤旗などは、今もその線で続報を伝え続けています。
男性は「抗議自殺」しんぶん赤旗 26日続報)

秋田生健会 保護行政の改善要求

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 生活保護申請を二度却下された秋田市の男性(37)が二十四日に秋田市福祉事務所前の駐車場で自殺した事件を受けて、秋田生活と健康を守る会と「秋田生存権裁判を支える会」が二十五日、記者会見し、保護を適用していれば命が失われずにすんだとして、抗議声明を発表しました。

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(中略)
背景に国のしめつけ
 心配されていたことが、またも起こりました。北九州市では、二度にわたる生活保護の求めを拒否された男性が餓死しました。今回の秋田市での事件も、生活保護の申請を「能力を活用していない」と却下されたうえでのことでした。


 生活保護行政が人の命を奪う―。あってはならないことです。二十一日、京都地裁の裁判官は、認知症の母親と心中をはかり承諾殺人に問われた男性の判決で「裁かれているのは承諾殺人だけではない。日本の介護制度や生活保護行政のあり方が問われている」と異例の見解を表明しました。


 これらの事件は生活保護行政のあり方を根本から問いかけています。
(中略)
 生活保護の受給者は九六年の八十八万七千人から、二〇〇五年の百四十八万四千人に急増しています。これは、小泉「構造改革」による格差と貧困の広がりの結果です。


 国民の生存権を保障した憲法二五条にもとづき、国が果たすべき社会保障の中心は生活保護です。政府はその責任を投げ捨てようとしています。これでは、北九州や京都、秋田のような事件が頻発しかねません。


 全生連の辻事務局長は「悲劇を二度と生まないために、政府が本来の生活保護行政の立場に戻り、生活保護予算削減のための新たな『手引』にもとづく『適正化』政策を中止すべきです」とのべています。(矢藤実)

 署名記事の堂々たる論陣です…が、ここで述べられる筋立て以外のものも事件の背景にあるような感じもしてしまうのです。


 しんぶん赤旗の第一報の方でも、自殺した男性について以下のような背景の説明がありました。
生活保護断られ自殺 秋田市福祉事務所前 37歳「福祉も心痛むべ」

 生活保護を二度申請し、二度とも却下された秋田市の男性(37)が二十四日、秋田市福祉事務所前の駐車場で練炭自殺しました。同日昼、発見されました。


 男性は二十三日、友人の男性(52)にたいし、「きょうやる(自殺する)。おれが死んだら福祉も少しは心が痛むべ(だろう)」と話していました。


 自殺した男性は、強い睡眠障害を持っていて、二年ほど車上生活をしていました。


 男性は一度、同事務所を訪ねて生活保護を受けたいと相談しましたが、住所がないからダメだと断られたといいます。


 ことし四月二十四日、友人といっしょに秋田生活と健康を守る会(奈良知会長)を訪ねて相談しています。


 一回目の保護申請は、「働く能力を活用していない」として却下されました。二回目の申請の途中(今月十日)から生健会との連絡がとれていませんでした。


 友人の男性によると、「ハローワークに行った回数がたりない」「(就職の)面接を受けていない」という「却下理由が書いてあった」といいます。


 友人は「自殺するな」と説得しましたが、男性は、ケースワーカーの名前をいって「化けて出てやる」「保護課じゃなくて『保護しない課』じゃないか」「おれが死んだら生健会に伝えてくれ。福祉を良くしてくれ」といっていたといいます。
(後略)

 睡眠障害が原因で「五年ほど定職に就けずに車上生活(約二年)し、国民健康保険証を持ってい」なかったこの37歳の男性があてつけ自殺?した理由を、「老齢加算廃止など福祉切り捨ての路線の中に今回の事件がある」と果たして断定できるものでしょうか。ひどく精神状態が不安定であったように感じますし、本当はなんらかの情緒障害がこの男性にあったようにも見えてしまいます。もちろんここで断定できるものではないのですが…。


 記事では、生活保護受給者の二倍にもなんなんとする急増を言っています。ちょうど長引く不況が企業倒産などを多発させていた時期に被ります。不景気で生活保護を求める人間が増え、それに行政が応えて受給者が増えたならば、それをセーフティーネットが働いたと安心こそすれ「小泉が悪い」と文句をつけるのは果たして妥当な考察なのでしょうか。


 また、睡眠障害とそれによるこの男性の苦悩は知る術もありませんが、ハローワークにそれほど通わず、就職面接も受けにいかなかったとされる私より若い男性に対し、通常では生活保護申請を却下するのも(申し訳ないですが)それほど不当なことだったとも思えない気もしてしまうのです。もちろんこれ以上の詳報が得られないところで何を言っても的外れになってしまうかもしれません。どういうライフヒストリーがあったのでしょう…


 私が「ワーキングプア」問題で少々素直でない反応をしてしまうのも、どうもこれもまた象徴的な旗印にして「小泉が悪い、格差社会が悪い」と言ってくる方々がでてくるなあと思ってしまったからなのかもしれません。啄木を出しましたのも、ちょっとそういう印象批判でこの問題を片付けて欲しくないという気持ちからです。
 冷静に、そして何がしかの具体案を出していただければ議論にも乗れるのですが、単に「誰それが悪い」という政治的主張の道具にするだけでは、社会問題の真の解決にはほど遠いように考えるのです。
 表面的なことでは軽々に判断できないのでは、という意味で上記秋田の自殺事件を引っ張った次第です。それにしても「また秋田か」とでも言いたくなるほど、秋田発の「いぐねぇ」ニュースが目白押しですね。ワーキングプアの番組でもそうでしたし…。もう溜息ばかりです。